原題は A Mind of Its Own。世界で初めて死体から切り取ったペニスを解剖し、勃起の仕組みを解明しようとしたダ・ビンチの言葉、
「自身の意志を持つ器官」から来ている….
持ち主の思い通りにならない器官に纏わる人類(というよりも主に西洋人)の観念の歴史と言うべきか。
前12世紀のエジプトの遺跡には、戦勝の証しに敵陣の男たちから切り取ったペニスの数が誇らしく列挙してある。その31世紀後のアメリカで、ベトナム戦争継続の理由を問われたジョンソン大統領は、「自分の説明に記者たちが納得しないのにいらだち、やおらズボンのチャックを開けると、ペニスを取り出して『理由はこれだ!』と言った」というようなトリビアルな情報満載なのだが、同時に文明のあり方を根源的に問う、とんでもない名著である。
前17世紀のエジプトにすでに勃起産業があった。古代エジプト人にとってペニスは、死後の生を担保するものであったし、古代インドではシバ神のペニスを祀(まつ)り、仏陀は馬並みの巨大なペニスの持ち主だったと信じられ、旧約聖書の神にはペニスは無く、古代ギリシャ人は神の力として崇拝し、プラトンは神の知性と狂気との距離を測る手段と、アリストテレスは女の素材に思想を与える具とみなした。
平均寿命25歳だったローマ人の男は幼時からペニスを象(かたど)ったお守りを身につけ、中世キリスト教は、ペニスを諸悪の根源と考え、ルネサンスの天才や医学者たちは、ペニスを諸々の神話から解放すべく苦闘した。KKK運動の裏には、黒人の巨大なペニスに白人女が征服されると怯(おび)える白人男の妄想があり、フェミニズムは男根主義を断罪した。











