携帯電話の電波が人体に有害ではないかとの危惧があるにもかかわらず、あまり本格的研究がなされてこなかったが、最近、携帯電話を過度に使用する男性は、その精子数が著しく少ないという研究結果が報告された。
研究を行なったのはアメリカのオハイオにあるthe Cleveland Clinic Foundation。研究の対象となった人たちはインド西部の都市ムンバイの不妊治療院に通院している364人の男性。研究結果は次の通りである。
・ 1日4時間以上使用する男性
――1ミリリットルの精子数平均5千万、精子の健康も不良
・ 1日2時間から4時間使用する男性
――1ミリリットルの精子数平均6.9千万、精子の健康は普通
・ 全く使用しない男性
――1ミリリットルの精子数平均8.6千万、精子の健康一番良好
この研究のリーダーである Ashok Agarwal 医師は携帯電話から出る放射線(radiation)がDNAに損傷を与え、睾丸の精子を作る細胞や精管に害を与えている可能性があると示唆し、次のように付言している。
「多くの人がまるで歯ブラシを使用するように、あまり結果を考えずに携帯電話を使用していますが、携帯電話は男子の生殖能力に壊滅的な被害を与える可能性があります。精密な証明はこれから必要ですが、携帯電話が生活に非常に普及しているので、その影響も甚大なものになりえます。」
以上の研究には反論もある。英国のシェフィールド大学の男性病学専門の上級講師であり、かつ英国不妊治療協会の名誉委員でもある Allan Pacey さんは、この研究は良い研究であることを認めたうえで、次のような趣旨のことを述べている。
「携帯電話を長く使う人はそれだけ携帯電話がポケットにないわけだから、どうして精巣に害を与えるのかわからない。携帯電話を頭に近づけているときに、睾丸に影響を及ぼすと言うことは意味をなさない。むしろ、携帯電話を使用する人は、座仕事が多いとか、ストレスが多いとか、ジャンクフォードを食べている可能性が高いとか、そのような事情のほうが精子数の減少に関係があるのではないか。」
現在世界的に男子の精子数の減少が見られるが、一時その犯人として環境ホルモンが槍玉にあがったことがあった。しかし、因果関係が明瞭ではないことを理由に現在は環境ホルモン犯人説は一時保留状態である。さて、今回の研究では携帯電話が精子数減少の槍玉にあがったわけだが、これも Allan Pacey さんから因果関係が明瞭ではないとの批判が寄せられた。何かを証明するときには、この因果関係という厳しい壁を乗り越えなくてはいけない。しかしである。因果関係が厳密な科学的手続きで証明されなくても、危険なものは危険なのである。それを本格的に暴こうとしないのは、企業利益が介在するからだ。私は、あと数十年したら世界中の多くの電話会社がおびただしい数の携帯電話の利用者から訴えられないことを念ずるばかりである。











