おしっこのことで悩まれていませんか?今回は、その中でも男性の排尿障害にかかわる疾患、特に前立腺肥大症についてお話しましょう。そもそも前立腺は、男性の膀胱頚部から後部尿道にかけて、尿道を輪状に取り巻くように存在し、大きさはほぼクルミ大で約20gの臓器です。前立腺は、主として精巣で分泌されるテストステロンという男性ホルモンに依存していて、加齢とともに大きくなる傾向があります。いわゆる前立腺肥大です。
60歳代では75%、80歳代では95%に見られるという前立腺肥大症。男性にとっては非常に身近な疾患です。初期にはほとんど無症状ですが、やがて頻尿や残尿感、排尿の中断、排尿しようとしてから出るまでに時間がかかる遷延性排尿などの症状が現れてきます。心当たりのある方は、専門医への受診をお勧めします。
■加齢とともに増加傾向がある前立腺肥大
前立腺を、夏みかんに例えてお話することがよくありますが、その夏みかんの中心の縦溝が、尿道にあたり、前立腺肥大症はその溝を取り巻く実の部分が大きくなった状態に見立てます。
なお、癌は主として皮の部分から発生します。前立腺肥大症の発症年齢については、Harbitzらの報告では60歳代で75%、80歳代では95%にみられるとあり、Mooreらは最若年39歳、Swyerらは思春期から増大し、30歳でピークになり、45歳まで横這いし、その後増大するものと萎縮するものとがあると報告しています。このように、男性にとっては非常に身近な疾患といえるわけです。
■前立腺肥大の自覚症状
次に症状と病期についてですが、[1]無症状期から始まり、[2]頻尿、残尿感、排尿の中断や遷延性排尿(排尿しようとしてから出るまでに時間がかかる)、苒延性排尿(実際排尿し始めてもなかなか終わらずだらだら出る状態)などの刺激症状期、[3]実際に残尿が発生する残尿発生期、[4]残尿が増加、排尿に強い腹圧を要し、上部尿路にも影響が出て、飲酒や風邪薬などの服用により、充血をきたして急性尿閉となる不完全尿閉期、[5]最後は溢流性尿失禁状態の完全尿閉期と進行し、[4][5]は手術適応とされています。このような自覚症状をもっと判りやすくして、スコアー化したものも外来においてありますので、心当たりがあれば、専門医への受診をお勧めします。
■手術療法はほぼ完治
では、外来での検査には、どんなものがあるのでしょう。まずは、肛門から指で前立腺を触診する直腸指診で大体の大きさや硬さ、表面の状態を観察します。
次に、実際の排尿状態を機械で自動的に計測する尿流量検査と残尿量測定を行います。さらに、正確な大きさや、癌の有無の鑑別も兼ねた経直腸的超音波検査、実際に尿道、前立腺や膀胱の状態を観察する尿道膀胱鏡検査や尿道膀胱造影検査などがあります。これらの検査と、ご本人の症状から病期を診断し、治療していきます。治療法には、内服治療と手術療法があります。内服治療により奏効する例もありますが、長期治療が必要となります。手術療法は、主として腰推麻酔下に、経尿道的に前立腺を切除する方法が行われており、1〜2週間の入院が必要ですが、ほぼ完治します。それぞれの方に合った治療法を、専門医と十分相談して決めていただくことが大切です。
■前立腺癌を合弁する場合も
なお、前立腺肥大症に前立腺癌を合併するものもあり、この鑑別診断も重要です。わが国の癌部位別死亡率の推移において、前立腺癌は急上昇を続け、羅患率においても、癌統計白書によれば1985年の羅患率を1としたとき、30年後の2015年には4.6倍と他の癌を押さえてトップになると報告されています。前立腺癌の診断手順としては、直腸診、腫瘍マーカー(前立腺特異抗原:PSA)、経直腸的超音波検査の3つでスクリーニングを行い、疑われるものには経直腸的前立腺針生検を実施し、確定診断を得ますが、前立腺肥大症を含め、排尿症状のある方にも積極的にこれらの検査を行い、早期発見に努めています。
実際、前立腺肥大症の精査加療中に癌の診断が得られるものも少なくありません。このように癌検診を含めた意味でも、おしっこに悩まれた方は専門医への受診をお勧めします














