1994年11月29日に福岡県博多湾の海岸に打ち上げられた他のメガマウス(全長4710mm、体重790kg)の生殖器官の形態に関する研究を行った。これまでに報告されている標本は、すべて雄であり、本標本が他の初記録である。標本は、採集後約2ケ月ー30℃で冷凍保存されていた。生殖器官は受卵孔から輸卵管、卵殻腺、子宮、総排出孔までと卵巣およびエビゴナル器官を摘出した。右卵巣には直径約1.1−2.3mmの小型卵が多数みられた。左卵巣様器官はエビゴナル器官と考えられ、さらに総排出孔付近にも同様な器官を持っていた。メガマウスの卵巣の形態は、ネズミザメ類等の食卵型(胃卵黄型)の生殖様式をもつ種類に良く似ており、本種の生殖様式が食卵型であることが示唆された。
右卵巣には排卵孔と思われるじょうご状の特異的な孔が見られた。卵穀腺は幅12mmと発達せず、ほぼ輸卵管と同程度であった。卵殻腺から子宮狭部までの長さは600mmであった。子宮はやや膨らみ、幅110mmであった。左右の子宮は鹿内に2つの開口部があり、膣の部分と子宮後方部は薄い膜が認められた。本個体はそろそろ成熟に達すると考えられたが、いまだ交尾を行っていない未成熟であった。
1994年11月29日博多湾に打ち上げられ、約2ケ月半凍結されていたメガマウスザメ雌の生殖器官を組織学的に観察した。卵巣には1mm以下の正常卵と1.2mm以下の退行卵が多数存在した。50μmの卵では核が中央に、細胞賃の周辺に表層胞が観察された。 130μmの卵は厚さ約20μmの透明帯を形成し、顆粒膜細胞層,基底膜,爽膜細胞層からなる卵胞上皮によって包まれていた。600μmの卵の細胞質には細かい顆粒状物質が満ちており、透明帯下には卵黄顆粒を含む層が出来ていた。卵巣内には卵巣孔につながる内腔が迷路状に走り、その上皮は繊毛細胞と分泌細胞から出来ていた。卵巣近傍のエビゴナル器官にはリンパ組繊が観察されたが、他の部位のエビゴナル器官の皮質では膠原繊維からなる結合組織が主体で、髄質にわずかにリンパ組織が観察された。 輸卵管と子宮前部には内腔に突出した襞が多数あり、その上皮は繊毛を有する細胞と分泌細胞から出来ていた。子宮峡部と子宮中央部では上皮が剥離していた。卵殻腺は管状腺と結合組織からなり、管状腺の上皮には分泌細胞の他、繊毛細胞も確認された。
これらの構造はウバザメを含むネズミザメ目のサメ類の観察結果と似ており、本種の生殖様式が卵食性であることを示唆するとともに観察個体が間もなく成熟に達することを示している。











