ヘルスケアという概念は、世界保健集会の「すべての人に健康を」(HFA)という原則に由来しており、アルマ・アタ宣言によって明らかにされたヘルスケアのモデルに基づいている。つまり、ヘルスケアとは、健康の推進と予防、疾病の予防、検査、処置、ケアおよびリハビリテーション等まで網羅する、幅の広いサービスすべてを含むものである。
したがって、患者は広くバラエティーにとんだヘルスケア提供者と接することになり、病気で誰かに頼らざるを得ない人間から、自己管理のための健康商品を手に入れようとする消費者や顧客に対するアドバイスを受けるクライアントに至るまで、ヘルスケアというさまざまな役割を演じることになる。そのうえ、ここで演じる患者は、健康状態が非常に優れている人から、生涯にわたる障害を抱えている人、末期的な状態にある人までその健康状態もさまざまだ。
ヘルスケア患者の権利を取り扱う際には、社会的な権利と個人的な権利とが区別されなければならない。ヘルスケアにおける社会的な権利は、すべての国民にヘルスケアを合理的に提供するために、政府及びその他の公的あるいは私的な組織によって採用されあるいは施行されている社会的責任如何に左右される。利用可能なサービスの量と種類、技術の洗練と専門分化の程度に関して、何が合理的かは、政策的、社会的、文化的、経済的な要因に左右されるものである。また社会的な権利は、ある国またはその領土に住んでいるすべての人が平等にアクセスできるか、経済的、地理的、文化的、社会的、精神的な点からの不公正な差別の壁を排除できるか否かという問題とも関わるものである。
ヘルスケアの社会的な権利は総合的に享受されるものだし、当該社会がどの程度発展を遂げているかに左右されるものである。また、ある意味においては、ある社会においてどの分野の発展を優先させるかという政治的な判断に服するものでもある。
これに対して、患者の個人的なヘルスケア権利は抽象的な用語でより直接的に表され、適用される場合は個々の患者に効力を持つ。これらの権利は個人の完全性、プライバシー、宗教的な確信といった分野をカバーするものである。社会的な権利についても触れてはいるが、個人的な権利を中心的な主題とするものである。患者の権利をこのように取り扱うための基本概念は、そのほとんどが人権や自由に関するいくつもの国際的な宣言に基づいている。この宣言は新たな権利を創設しようとするものではなく、患者とヘルスケアの領域に、既に知られている権利を、論理的で包括的な規定として、適用しようとするものである。
ヘルスケアの増進だけではなく、自分たちの患者としての権利をより完全に理解したいという人々の熱望を反映し表現する方法を探ることを、目的としている。そうすることによって、患者のみならずヘルスケア提供者の視点も念頭に置いている。このことは権利と責任が補足的な性質をもっていることを暗示するものである。すなわち、患者は自分自身のセルフケアについてもヘルスケア提供者についても責任を負うものであり、ヘルスケア提供者も他のすべての人々と同じく人権擁護を享受している。
このテキストでは、患者の権利を明示的に規定することによって、人々はヘルスケアを求め、受領し、あるいは供給する際において、より一層自分の責任を認識するようになり、このことは患者と提供者の間の相互的なサポートと尊重に特徴づけられる関係を確かなものとするということを基本的な前提として仮定している。
患者は、ヘルスシステムを最善に機能させるために実際的にどんな方法をとりうるか注意すべきである。患者が検査や治療の過程に積極的に参加することは、たいていはよいことであるし、時には不可欠でもある。検査や治療においては、患者が、担当の医療従事者に、必要なあらゆる情報を提供することが、常に重要である。患者は、患者と医療提供者との間の対話を誠実なものとする上で、医療提供者に相対する必要不可欠な役割を果たすのである











