2004年、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社が、女性向けとしてははじめて、性機能障害、不感症等の治療用の処方薬の販売許可を求める申請を行なっていたが、米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会がこの申請を却下する勧告を答申して以来、女性の性衝動が話題になっている。他の企業も、巨大な市場が見込めることを察知しており、同様の薬の開発に取り組んでいる。
「女性の場合はもっと複雑のため、血流を増加させるバイアグラを投与するだけではなく、仕組み全体のバランスを取れないかと、われわれは話し合っている」と、女性の性機能障害の専門家で、カリフォルニア大学サンディエゴ校のローリー・フッターマン助教授(精神医学)は述べる。
全体でみると、女性の4割が性機能障害に悩んでいると推定されている。その大部分(85%)は、第1にセックスをしたいという衝動が沸かないという問題を抱えている。さらに約10%が性的に興奮できず、推定で5%がオーガズムに達することができないのだ。
以前は男性の性機能に関する問題も精神的なものだと考えられていた。性的不能の症例のほぼすべての原因は、男性性器にまつわる問題ではなく、心理的な要因とされていたのだ。ところが、バイアグラやそれを模倣した薬が登場すると、膨大な数の男性が、精神科に通わなくても突然再び勃起を経験できるようになった。
バイアグラは、一部の女性患者、とくに、性反応を鈍らせる抗鬱(うつ)剤を服用している患者に対しては確かに効果があるようだ。とはいえ、男性の場合のように既存の治療法を覆すような効果があるとは、研究者も考えていない。バイアグラはペニスに流れ込む血流を増やすことによって勃起を促す。血液循環の問題は女性の症状にも影響を及ぼしてはいるが、その度合いはかなり低く、おそらく問題を抱える女性の20人に1人に過ぎないだろう。
「女性は男性のようには動脈硬化にならないし、オーガズムに達しない理由も男性とは違う。だからこそ男性向けにしか治療薬が存在しないのだ」とオハンラン博士は述べる。
性衝動が低い男性がテストステロン(男性ホルモン)を服用すると、症状が改善することが多いが、このホルモンは女性にも効果があるようだ。テストステロンは女性の体内でも作られており、この量が減少すると、無気力や性衝動の低下を招くとされている。セックスとリビドー[性的衝動]に注目すると、テストステロンは女性のリビドーを高めるだけでなく、オーガズムや性的な空想も強化する。これらすべてが非常にうまい具合に回復するようだ。
それに、ホルモンは期待されているほどの万能薬ではない可能性もある。オハンラン博士によると、ホルモンは一部の女性には効果があるが、女性のほとんどの性問題の原因は心理的なもので、「子どものときに受けたしつけ、ティーンエージャーのときに性行動について受けた教育、マスコミから得る情報、性的なものに始めて触れたころの違和感の度合い、セックスの楽しみ方、パートナーを向上させられるかどうか」などに元をたどることができるという。
では女性の性問題は、ホルモンや性器にあるのではなく、主に頭の中にあると考えてもよいのだろうか? すべての研究者が、女性は男性の小型版だと考えてきた。男性に効果があるものは女性にも効果があるはずだ、というわけだ。しかし女性は生化学レベルで男性とは異なり、性機能の点でも異なる。
『ブレイン・リサーチ』誌に発表された研究の中で、複数の女性が下半身が麻痺した後も自分で性器を刺激することでオーガズムに達した事例を報告した。同名誉教授は、これはおそらく、感覚が脊髄ではなく迷走神経を通って伝わったためだとしている。「彼女たちに知覚はない。しかし、脊髄損傷を受けていない女性と同じ脳の部分で確かにオーガズムの反応がある」
この研究成果は麻痺のない女性にも応用可能なのだろうか? この発見は、研究者がより広い視野から問題を見るのに役立つだろうとのことだ。標準的な女性の性機能がどういうものかを、まず理解しなければならない。女性に何が起こるのか、女性にとって何が重要なのかといったことだ。女性についてさらに多くの研究を行なう必要がある。














